期待とはこちらが勝手に想像を膨らましているだけのものであって、裏切るのは相手ではない。とはわかっていても期待は外れしまった。
「神谷バー」明治13年創業。文豪にも愛された日本初のバー。
「デンキブラン」神谷バーの代名詞ともいえるカクテル。「電気がめずらしい明治の頃、目新しいものというと“電気〇〇〇”などと呼ばれ、舶来のハイカラ品と人々の関心を集めていました。」
あちらこちらの情報から、神谷バーには興味があった。念願叶って訪れたのはいいのだが、自分の描いていたイメージとは程遠い店だった。
店内に入るとショーケースの中のサンプルを見て食券を買うよう促される。ここで当然席に案内されるかと思いきや空いている席を探して座れとのこと。この時満席。席を探して店内を見回す客やら立って飲んでいる客もいる。店内は騒がしい。やっとの思いで相席を見つける。そして忙しく歩き回るウエイターを見つけ手招きして食券を渡す。これにも一苦労だ。あのウエイターは間違いなく注文を届けられるのかと不安になりながら暫し待つ。それにしても本当に騒がしい。
デンキブランとスモークサーモン
昭和時代の百貨店の大食堂みたいだ。
思えばこれが明治発祥の日本のバーの原型。当時はハイカラな洋風酒場として華やいでいたのだろう。そうだ洋風居酒屋なんだ。これも浅草という場所柄、下町の威勢の良さと気っ風をも併せ持つ酒場。自分の想像からは外れたが、これはこれで風情ある名店なのだろう。なんだかんだと言いつつも、帰りにデンキブランのボトルをお土産に買う。グルマン先生がもの欲しげに眺めていたからね。
「バーのカウンターは、男の人生の勉強机である」
「甘い生活」 島地勝彦著
この本にも色々と教えてもらったが、バーは好きな場所だ。地元のバーに通いマスターに叱られながらバーでのお作法を教えてもらった。尤も何も身につかなかったのだが…。