Such Is Life

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「ベトナム戦記」を読んだ

ベトナム戦記 (朝日文庫)

「ベトナム戦記」 開高健

何で今読むのかという感はあるが、書店で開高の真剣な眼差しが目に入ってしまった。

 

ヴェトナム戦争は僕が少年期の出来事であり、アメリカが泥沼に嵌まり込んだ戦争という事ぐらいしか頭に無かった。その後枯葉作戦による異形児などのニュースやこの戦争に関する映画を観たりして、表面上の経緯はなぞってみたものの戦争の本質は理解してはいなかった。

 

従軍記者として戦場で体験した戦闘や兵士たちとのやり取り、そして貧困に喘ぐ農民や体制に抗う僧侶などのヴェトナムの凄惨な状況が開高節で生々しく綴られている。そこに入り込んだ者でなければ知り得ない事実、命懸けの取材。開高はそこからヴェトナム戦争の本質を見出そうとする。

 

本来ヴェトナムの内戦であったものを、アメリカが介入することによって複雑かつ長期化した戦争であり、本来の意義を捻じ曲げてしまったことで関わった者全てに悲惨な不幸を招いている。

 

相手が農民なのかベトコンなのか分からずに無差別に農村を攻撃する。ベトコン一人を殺すために農民5人を殺すはめに。だから農民はベトコンに寝返る。アメリカはベトコンを殺す度にベトコンを増やしていった。

 

人間を殺しても支持する側によって「英雄」にも「殺人鬼」にもなる。それが戦争。

 武器は持たずとも人間社会にはそんな悪意に満ちた正義が溢れている…Such Is Life.