准教授がご自宅で何やら始めたという情報をキャッチした。
お宅に覗きに伺うと、准教授は「いぶし処」という箱の前で思いつめた顔をしていた。こんな暗い雰囲気の准教授は珍しい。どうしたんだろう…?
燻製をやっていたのだが、「どうも味付けが上手くいかない」と落胆のご様子だ。例え大金の入った財布を盗まれようが、買ったばっかりの車が事故って廃車になろうとも、こんなに落ち込むことはないであろうという顔をしている。(燻製にここまで真剣になれるのは幸せなのか、不幸なのか?)
燻製の出来栄えに納得出来ない准教授は、この世の終りのような顔つきで「味がイマイチかも知れない」と言いながらも、お裾分けをしてくれた。
ご本人の心配をよそに頂いた燻製は、鼻を抜ける芳ばしい香りがしっかりと付いていて、酒がグイグイ進むような燻製独特のリッチな味だ。とても素人(本人はプロだと思っているかも知れないが)の作った燻製とは思えない味に仕上げられていた。おかげさまで家族揃っての楽しい宴が出来ました。ごちそうさまでした。
お礼のメールを送ると、その後も准教授は「味付けが…」「レシピがないから…」などと、いつまでも愚痴を言い続けていた。そんなに気にすることはないのに…そうか!分かったぞ!!多分准教授は燻製を作っている間に煙を吸いすぎて、脳が燻されてしまったのだろう。准教授の脳みその燻製…それは食えんわ、いくらなんでもな。Such Is Life.