数日前のことである。とあるバーに於いて、サッカーカルト信者によるW杯準決勝の行方を占う儀式が密かに行われていた。
彼らは1970年のメキシコ大会から、サッカーへの純粋なる熱狂と偏執を持ってW杯を信仰し続けて来た者たちである。因って通常のサッカーファンとは異なるアブノーマルな思想をも持っている。
「確かにベルギーは強い。しかし、このまま優勝されては困る」
「まかり間違ってクロアチアが優勝なんてことになったら…」
このように、彼らは優勝経験の無い大会史上の新興国に勝たれてしまうことを恐れているのだ。
実は単純な話である。「W杯はそうは甘くないぞ」と言いたいだけである。ベルギーとクロアチアを嫌いなわけでもなく、フランスとイングランドが好きなわけでもない。言い換えれば優勝経験或いはサッカー大国としてのネームバリューの観点から、崇拝するW杯の決勝が両チーム初優勝を懸けたカードでは許せないのだ。
準決勝第一試合 フランス VS ベルギー
フランスが今大会最強と目されていたベルギーを何とか破る。これで決勝戦が、どちらが勝っても初優勝ということはなくなった。
第2試合 イングランド VS クロアチア
試合中にイングランドで取材中(ハイドパークではパブリックビューイングに3万人が参加と伝えられた)のロンドン支部から、クロアチアの得点に落胆する僕の元へ
「政治的な理由か?」
との問い合わせがあったが、僕はサッカーと人生に政治は持ち込まない主義なのである。難しい話は苦手なので勘弁して頂きたい。
そして試合は進み
「おーーーーー」
「あーーーーー」
「はーーーーー」
と、信者たちの間で(文章にならない)悲痛な叫び声がSNS上で飛び交う。
延長の末、イングランドが負けてしまった(涙)。
ほとほと疲れた。試合前には御託を並べてみたが、もうこうなってくると何処が優勝してもいいじゃんと思う。W杯信仰も楽じゃない…。Such Is Life.