大通りを足早に歩いていくと、見落としてしまいそうな小さなサインが出ている。そのサインの下の狭い路地を入っていくと
Ye Olde Cheshire Cheese (145 Fleet St., London)
そこにロンドン最古のパブがある。(Ye Olde は 、現在のThe Old らしい)
創業1538年。その頃日本は戦国時代。織田信長が生まれたばかり…。
マーク・トウェイン、チャールズ・ディケンズ、コナン・ドイルなどの文豪が通ったことでも知られている。
1666年のロンドン大火でオリジナルの建物は焼失したが、翌1667年にリビルトされた店舗が現在も使われている。
レジェンドのパブの空気に少々緊張感を覚える。
古色蒼然とした店内で頂いた黒ビールは、今までに飲んできたものとは別格だ。
古いから良いのではなく、良いものだけが長い時間を経てトラディショナルとなる。350余年の時間が静かにゆっくりと刻まれている。この熟成はこれからも止まることなく続くのだろう。僕は、その長い長い時間のたった一瞬に居ただけだ。
幾つかの部屋があるようだが、開店早々は小さなバーだけがオープンしていた。こちらは地下にあった部屋。他にメインダイニングもあるようだ。
こんなに古い店が当たり前のように残っていて、僕のような旅行者でも気軽に入店できるのは感慨深い。ロンドンの奥深さを、僅かながらも知る。Such Is Life.
*こちらに訪問できたのは、ロンドン滞在中に「古の文豪よろしく、本物で一杯いってほしいものだ」と情報を与えてくれた方のおかげ。サヴォイホテルのバーへも行って来いと勧めてくれたが、ドレスコードに見合った服がなくて断念。どんな分野でも、好事家の助言はありがたい。蛇の道は蛇。