Such Is Life

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「キキ 裸の回想」を読んだ

キキ 裸の回想

「キキ 裸の回想」 ビリー・クルーヴァー+ジュリー・マティン

エコール・ド・パリの時代、歌手・モデル・女優として多くの芸術家たちに愛されたキキの回想録。

 

文豪ヘミングウェイが序文で「これを翻訳するのは犯罪である」と記している。

「もし英語で読んでつまらなかったら、原文で読んで欲しい」とまで。

つまりはキキの表現が秀逸でフランス語原文で読まなければ、その本質の良さは分からないと言いたいところか。

 ヘミングウェイさん、無茶言っちゃあいけませんね。

 

レオナール・フジタの伝記本を読んだ折、フジタがキキをモデルに雇い、私生活でも面倒を見ながら可愛がったキキのことが書かれていた。

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「寝室の裸婦 キキ」 レオナール・フジタ

 

なんとなくこの時代の香りに触れたくてキキに関する本を探していたら

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なんと!この奥の本棚にひっそりと佇んでいた。

掃き溜めに鶴…じゃない。

蛇の道は蛇…でもないか。

兎に角、お借りしてきたわけです。

 

私生児として生まれ、極貧の中おばあさんに育てられたキキ。

少女時代のキキは目を覆いたくなるような境遇で生きていく。それでも自尊心と陽気さを失わず成長した(生き長らえた)キキは12歳でパリに出る。

 

僅かな給料で満足な食事も衣類も部屋もない最低の生活から階段を登りつめ、モンパルナスのカフェで歌い、画家のモデルをし、やがて映画出演や絵も描くことになる。

美しい顔立ちと肉体そして歌声で名立たる芸術家たちに愛され「モンパルナスの女王」として君臨した。

 

それでも生来の性格からか、この時代の饗宴に身を任せ、たとえ自分が困っていても気前良く他人に分け与え、生い立ちと同じく極貧の中51歳で旅立っている。

 

困窮を極めた生活振りを語りながらも、深淵の暗闇に光が差し込むかのような甘く切ない官能的な回想となっている。気性の荒さもチャーミング。

 

数多くの恋をしたキキであったが、その中でも長年愛人として連れ添った写真家マン・レイの写真が素晴らしい。

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「アングルのヴァイオリン」 マン・レイ

キキの背中をヴァイオリンに見立てたマン・レイの傑作。

 

パリを愛し、パリに愛されたキキ。

エコール・ド・パリ 出来ることなら迷いこんでみたい。Such Is Life.