とあるバーのマスターのブログを読んで、札幌はすすきのにあるバー「やまざき」のマスター山崎達郎さんが亡くなられたことを知った。半世紀以上に渡り、すすきのを酔わせた現役最高齢バーテンダーの訃報。山崎氏の功績はここでは割愛させて頂くが、その世界ではあまりにも偉大な存在だった。享年96才。
2010年に僕は「やまざき」を訪れている。
ここを知り、ここに訪れたきっかけは、冒頭に登場した、とあるバーのマスターから聞いた話である。若かりし頃のマスターが山崎さんにしてしまった、ちょっとだけの失礼なこと。マスターは、いつの日か山崎さんにお会いしてお詫びをしたいと呟いていた。
入店時には姿が見えなかった翁が登場したのは8時頃だったか。若手のバーテンダーが僕を翁に紹介してくれた。そして、僕はとあるバーのマスターのいきさつをお話させて頂いた。マスターに成り代わり、マスターの気持ちをお伝えした。
すると、ニコリと笑われた翁は「それでは切りましょうか」と一言。
画家を目指したこともある翁が、客の似顔絵の切り絵をされるのは本を読んで知っていた。しかも若い女性客に喜んで切ると。「女性しか切らないのではないですか?」という僕の問いに、笑みを浮かべながら翁の手は素早く動く。その時、翁は御年90才。シリアルNOは45896、サラサラっとサインをして渡してくれた。紙を2枚重ねにして切ったもう一枚は、スクラップブックに綴じ込んで、ご自分も残されている様子だった。
人との出逢いには物語がある。優しい出逢い、辛い出逢いもある。そしていつかは別れもやって来る。Such Is Life.
合掌