拝啓 西野朗様
ベルギー戦お疲れ様でした。敗退は大変残念でしたが、西野ジャパンの奮闘に日本中が沸き立ちました。試合終了後のお疲れのところ甚だ恐縮ではありますが、お伝えしたいことがあり、筆を取らせて頂きました。
私があなたを知ったのは、当時大学生のあなたが日本代表でプレーされた試合をテレビで拝見した時でした。大学生が日本代表のユニホームを纏い颯爽と走る姿に憧れを抱くと共に、あなたの端正な容姿に嫉妬心を覚えたものでした(私などは嫉妬する価値もないのですが)。日立での現役引退後、あなたは指導者の道を歩み、アトランタオリンピックでは監督としてブラジルを破り、マイアミの奇跡と称賛されましたね。
そして今回、大会直前での監督就任で迎えたロシアW杯。あなたの背中には、いかほどの重圧がのしかかっていたことでしょうか。決勝トーナメント進出を懸けたポーランド戦、あなたは先発メンバー6人を入れ替えるという大胆な戦略に打って出ました。そして、試合終了前の時間稼ぎのパス回し。結果、日本は決勝Tに進出しましたが、残念ながら国内外ではその戦い方に多くの批判が噴出しました。ここで私は戦略の良し悪しや事の善悪を語るつもりはございません。日本がパスを回し始め、それに対するポーランドの大人の対応を目にした時、「おおおっ!日本がワールドカップをしている!」と私は感動したのです。あれこそがW杯の厳しさ、W杯で勝ち上がることの難しさを凝縮したシーンではないでしょうか。そして次戦のベルギーは強かった。あの前試合での選手温存がなかったら、負けは負けでもどんな展開になっていたのでしょうか。ベルギー戦まで見据た大きな決断は、また大きな賭けでもありました。クールなあなたの何処に、あれだけのクソ度胸があったのでしょうか?…失礼しました。話が逸脱しました。
最後になりますが、あなたがロシアで残した足跡は、これからの日本サッカー界の貴重な財産となり、いつの日か日本代表を次のステージへと導くことでしょう。そして、あなたは今回も多くの老若合わせた多くの女性ファンを獲得したことでしょう。W杯を通じて、人の人生というのがなんと不平等なものかを知らされました…。さて、本来であれば空港にお迎えに上がり、この気持ちを直接お伝えすべきところではありますが、私はこの先もW杯監視の仕事を抱えております。書面にて誠に恐縮ではありますが、あなたが与えてくれた感動に心より感謝の意をお伝えしたいと思います。
日本代表の感動のW杯をありがとうございました。
後のW杯のことはお任せ下さい。 敬具
*西野監督のファンで女子高生気分のおば様から「帽子を被った監督の写真を使って欲しい」との要望がありました。なんで帽子がいいの か?女子高生の言うことは分かりません…。Such Is Life.